びしょ濡れで賢くお買物
びしょ濡れを知らない子供たち
(時は、2016年夏に遡ります…)
「ただいま~」
おいらが家のドアを閉めてから、そう言うと。
ばたばたばたっ
「智くぅん、お帰り~~~!!」
むぎゅっ!!!
く、くるしぃ…
でも。
翔ちゃんの、香りと。
翔ちゃんの、からだの熱さ。
ああ、おいら、自分ちに。
翔ちゃんとこに、帰って来たなあって。
これで、実感できる。
「智くん、撮影、お疲れ様。
…あれ、今日、雨に濡れた?」
「え、…うん、撮影中に。
でも、なんで分かったの?
もう、とっくに乾いてるよ?」
「智くんの馨(かぐわ)しい香りの中に、雨っぽい?匂いがしたから。
… って!智くんっ!
雨に濡れたって、だいじょぶっ!?
風邪、ひいてない?熱は!?」
もう、翔ちゃんってば、心配症なんだから。
「だいじょぶだよ。ちゃんとふいたし」
「い~や、万が一ということもあるからっ。
身体が冷えたりしてたら、いけないし。
お風呂の準備できてるから、智くん、早く入って」
「も~、わかったよ。ありがと、翔ちゃん」
「ふふっ、わかればよろしい」
すると。
世話やき母ちゃんのようだった、翔ちゃんの目が。
急に、色っぽくなって。
翔ちゃんの顔が、近づいてきて。
ちゅっ…
翔ちゃんは、おいらに。
おかえりなさいのちゅ~を、した(照)
おいらは、翔ちゃんのちゅ~の感触と熱さのよいんにひたって。
ちょっと、ぽ~っとしてたら。
「はい、早くお風呂お風呂っ」
翔ちゃんはまた、世話やき母ちゃんに戻って。
おいらは、翔ちゃんに背中を押された。
もう、翔ちゃんってば。
でも。
そんなとこも、可愛いんだよね。
あ~、もうおいら、翔ちゃん、好きすぎるわ。
そんなことを、思いながら。
おいらは、お風呂場に向かった。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
おいらが、お風呂から上がってきたら。
「あぁっ!智くんっ。
髪、ちゃんと乾かさないと、風邪ひくよっ」
って。
翔ちゃんは、おいらの首にかかってたタオルをとって。
おいらの頭を、ふきはじめた。
わしゃわしゃ、って感じじゃなくて。
やさしく、やさしくって感じで。
てか、翔ちゃん、そんなんじゃ、いつまでやっても水分とれなくない?
「翔ちゃん、だいじょぶだよ。
おいら、自分でふくよ?」
って。
おいら、翔ちゃんの手からタオルをとって、自分でわしゃわしゃと、ふきだしたら。
「ああぁっ、智くんっ!そんなしたら、智くんの繊細な髪が傷んじゃうっ」
って。
おいら、女の子じゃないんだから。
もうすぐ、36になるおっさんだよ?
でも、結局。
またおいらは、タオルを翔ちゃんにうばわれて。
やさしく、頭をふかれた。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
あんまりやさしく、ふかれるもんだから。
ちょっと、ぼ~っ、ていうか。
うとうと~っ、てなってたら。
タオルが、おいらの頭から、ふわっとはなれて。
「さ、終わりっ」
お、翔ちゃん、頭、ふきおわった?
そしたら。
翔ちゃんの腕が、おいらの前に、まわってきて。
やさしく、つつみこまれた。
そして翔ちゃんは。
おいらの髪に、顔をくっつけてる、みたい?
「ん~、智くんのいつもの香りだ。
もちろん、智くん自身の香りは、変わらないんだけど。
…そこに、違う香りや匂いが交じわってると、俺の智くんを侵された気がして、さ」
おいらをやさしくつつみこんでた、翔ちゃんの腕に。
ぎゅっと、力が入った。
って、翔ちゃん。
そんなこと、ないのにね。
おいら、いつだって、翔ちゃんのとこに帰ってくるよ。
翔ちゃんの、腕のなかが。
翔ちゃんの、香りと熱さにつつまれる、ここが。
おいらが、安心できる場所。
でも、そう言われて。
翔ちゃんの、独占欲?っいうのを感じて。
うれしいって思っちゃう、おいらも、おいらで。
やっぱり、翔ちゃんのこと、好きすぎるよね。
おいら、翔ちゃんに、抱きしめられながら。
ほわっとしあわせな気分で、いたら。
ちょっと思い出したことが、あったんだ。
今日の撮影で、雨にぬれたときね。
監督が、Tシャツ貸すよって、言ってくれたんだけど。
おいら、なんでか、断っちゃったんだよね。
監督、何回か、やっぱり貸すよって。
風邪引いたら、いけないしって。
言ってくれたんだけど。
やっぱりおいら、断ったんだ。
おいらがあんまり断るから。
おいら、もしかしたら、監督をイヤな気持ちにさせちゃったかもしれない。
でも、おいら。
翔ちゃんじゃない香りには、つつまれたくなかったのかなって。
そう、思った。
そう、気付いたら。
おいらは、もっと。
翔ちゃんの香りを、熱さを感じたくなって。
翔ちゃんの方に、からだの向きを、変えた。
「智くん…?」
おいらは、翔ちゃんの白い首に、両手をのばして。
手を、すべらせて。
翔ちゃんの、もちっとした熱い肌を感じて。
そして、そのまま、翔ちゃんの首の後ろに、腕をまわした。
目の前には、おいらが大好きな、イケメンの顔。
おいらは、その顔をひきよせながら。
おいらは、背中から、ソファにしずんだ。
- END -
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
、翔ちゃんがヤキモチやいちゃうかもと、智くんが思ったから、とか。