本当に洒落にならない迫力

迫力についてアメリカ人100人に訊いてみた

-S side-

「しょうちゃん待って！マジで行くの？」

真っ青な海のようなブルーのスニーカーを履いた雅紀が夜空の下、サラサラと髪を踊らせながら太陽の下を掛けるように爽やか風吹かせてやってくる。

思い立ってホテルを飛び出したけど、一体今は何時なんだろ。

「何してんだよ。遅い」

「スニーカーの紐がおかしかったの。てか、しょうちゃんサンダル？！」

「え？なんで？いいじゃん」

「神聖な場所だよ？せめて靴ぐらい履いてよ」

「いいじゃん。ハワイはラフでもアロハな感じで許してくれるよ。サンダルの方がポピュラーだろ。しかもさ、アロハシャツとビーサンで挙式する人もいるんだよ？」

「マジで？！」

いや、適当に言ったんだけど・・・・・・
何でも真に受ける所も、めちゃくちゃ好きだ！！

「へーさすがアロハワイだね！」

親指と小指を立てアロハポーズを楽しそうにしながらハシャグ雅紀を見ながら俺も同じポーズをして両手をフリフリ肩を並べて歩いていく。

波の音しか聞こえない月明かりに照らされてる道を2人、手を繋きゆっくり時間をかけ歩幅を揃えて歩いていく

踏み出す1歩1歩が大事で、なんだか泣きそうになった。

こんなにものんびりと外の空気を吸うなんて日本では無いかもしれない。

「なんか夢みたいだね。同じ空の下をさ、こうして誰の目も気にせず手を繋いで歩いてるなんて」

「俺も同じ事思ってた」

「夢じゃないよね」

「夢にさせねーよ」

そう言って繋いだ手をギュっと力いっぱい握ると
雅紀はハニカミながら嬉しそうに微笑み、繋いだ手をブンブンと大きく振った。

開かれていない教会の前まで来てから
またしても泣きそうになっている雅紀を見て噴き出す。

「なんで笑うんだよ」

「どんだけ感受性豊かなんだよ」

「だって・・・・嬉しいんだもん。しょうちゃんは嬉しくなの？」

「嬉しいよ。マジで夢みたいだよ。特別な場所でこうして雅紀と愛を誓えるんだからさ。なんかやっぱ幸せ過ぎると怖くなるんだな」

気品溢れた総石造りの大聖堂を目の前にした俺の足は少しすくんで踏み出す1歩がなかなか出せずにいた。

「この扉開いたりしてね？俺達の為に開けてくれてるかもよ」

雅紀がニコニコと笑いながら風格のある大きな扉を引く真似をすると・・・・・

ギィ・・・・・

「しょーちゃん・・・・・あいちゃった・・・・・」

「マジかよ・・・・・」

重そうな扉は、あっさりと開いてしまう。

「俺達のため・・・・？」

「そうかも・・・・・・」

目を大きく見開く雅紀と顔を見合わせてから開かれた扉の中に視線を送ると
そこには息を呑むような景色が広がっていた。

教会の中は天井が高く厳やかな雰囲気で、重圧な音色が今にも聞こえてきそうな最大級のパイプオルガンに、壁一面に施されたカラフルなステンドグラスはまるで中世のヨーロッパの様な雰囲気。

100年近い歳月をかけて造られたとは聞いていたけど本当に圧巻で言葉が出ない。

隣の愛しい人を見れば

「しょ・・・・ちゃ・・・・・すげぇ・・・・・」

案の定、瞳いっぱい涙で潤ませている。
色とりどりのステンドグラスを背景にした雅紀の横顔は超絶綺麗で息をするのも忘れた。

「しょうちゃん・・・・凄いね・・・・・ここさ・・・・・昼間だったら、もっと綺麗なんだろうな。この廊下にも反射して映るんだよ。すげぇ・・・・・」

瞳を輝かせキョロキョロ辺りを観察する雅紀を見て幸せな気持ちになる。

あまりにも迫力がある場所でサンダルで来た事にやっぱり後悔の気持ちが押し寄せながらも、目や心に焼き付けようと俺も一緒に愛する人と同じ風景を見渡していく。

大きなガラス越しに顔を覗かせた月と目を合わせながら
いつの間にか離れてしまった手を、もう1度繋ぎ直し雅紀に囁いた。

「今度はさ太陽の下で、みんなにも来てもらおうな」

「しょ・・・・ちゃん・・・・・」

愛くるしい瞳に溜められた滴は、俺の一言を聞いてから滝の様に流れ出す。

「こっちだと同性婚認められてるんだって」

「知ってる・・・・一緒に調べたじゃん」

「だよな」

「早く日本でも・・・・もっと当たり前のように認められるといいね・・・・」

「・・・・・ま、認められなくてもしちゃうけど！ははっ」

笑ってないと自分も号泣しそうだ・・・・
今はカッコイイ俺でいたい。

2人で号泣してたらアロハな神様も呆れちゃうかもだしね。
きっとハワイだから陽気な神様でしょ？

きっと笑顔が大好きだと思うから
最高の笑顔の持ち主の事も守ってくれるよな。

涙を流し何度も頷く雅紀の涙を指で拭い静かに抱き寄せたけど
抱き締めてしまえば震えるぐらいきつく抱き締めているのが分かった。

「しょうちゃん・・・・苦しい・・・・・・」

「あ・・・・ごめん・・・・」

慌てて離す俺の腕に雅紀はしがみつく様に身体を擦り寄せると

「幸せで苦しい・・・・・離さないでよ・・・・・」

温かい涙は俺の腕を伝いポタポタと落ちていった。

太陽の下じゃなくても
Tシャツにハーパンでも

雅紀は充分綺麗で、容姿も心もこんなにも美しい恋人に、こんなにも愛された事を神様に心から感謝しながら

小刻みに震える雅紀を抱き締め小さな頭にキスを落としながら静かに目を閉じた。

「相葉雅紀は櫻井翔を一生愛する事を誓います」

「櫻井翔は相葉雅紀を一生愛する事を誓います」

月明かりに照らされた十字架の前で
神様も呆れちゃうぐらい、何度もキスをし

俺達は永遠の愛を「特別な場所」ハワイで誓った。

end

迫力つながってる