人見知り 頂点は、立ち止まらない。
人見知り どこまで、輝けるか。
オットが耳にあてているスマホから、
相手が電話にでた気配が伝わってきました。
オットは私から目をそらしていましたが、
私はじっとオットを見ていました。
「もしもし、ねぇ前に行った○○って店、
あれっておれおごってないよね。割り勘だったね。」
開口一番、オットが一気にまくしたてました。
オットは普段から順序だてて話すことをしません。
前置きとか説明とかなしに、突然本題を一方的に告げるので
たいてい、相手はとまどいます。そしてオットは相手のとまどいを気にしません。
相手の声が電話からもれないことを願うあまり、
オットはほっぺたがつぶれるくらいスマホを顔に押し当てています。
「そうだよね。おごってないとわかったらそれでいいから。じゃぁ…」
どう見ても相手は何も答えてないようですが、
強引に電話を切ろうとしているオットの手から、
私は、
電話をうばいました。
躊躇している場合ではありませんでした。
どうか相手に、人見知りの性格と緊張が伝わりませんように…!
「もしもし、アユラさん?お休みのところ失礼します。」
オットは一瞬、電話を奪い返そうとするしぐさを見せましたが、
すぐにあきらめ、ダイニングの椅子に座りました。
電話のむこうから、若い女の子の声が聞こえてきました。
「あ、はい。すみません。」
文字では伝わらない、ゆっくりと、間延びしたような話し方です。
私「主人からいろいろお話うかがいました。
お二人がすごく親しい関係にあり、主人が二人の楽しみのため
いろいろ頑張っていることも聞いてます。」
アユラ「あー、はいっ、すみません。」
本当にゆっくり話す人です。声ははりがあり元気な印象ではあるのですが
文字と文字の間に「-」が必要なくらいです。
そして驚いたことに、相手は笑っているのです。
笑いながら今度はむこうから切り出してきました。
アユラ「あのぉー、食事ですがぁ、おごってもらってはぁ、いませぇん。はいっ。」
私「何度も食事をされているようでうが、一度もおごらなかったんですか?」
アユラ「はいっ(笑)ゼロですぅ。ゼロでぇ、ございますぅ(笑)。」
決して大げさにおもしろおかしく書いているわけではないのです。
親しい友人と楽しい話でもしているかのように、
オットの浮気相手は、私におどけてみせたのです。
一体この女はなんなのだ。
自分が不倫をしてきた男の妻から、突然電話がかかってきたというのに
全く動じることなく終始薄笑いで対応している。
気持ちのよいやり取りは、はなから期待していませんでしが、
会話を始めてからわずか2分、私一人が動揺していました。